空模様

思いついたままをぽつぽつ綴ります。
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夏休み [4]

えっと、1度書いた文が消えました。イラッときましたが、大した文を書いたワケでもないので、そのままそっくり、とはいきませんが、また書き直しです。新しい管理画面に慣れない私……。

今日も蒸し暑い日です。これくらい蒸し暑いと、いっそ、この蝉時雨の中を突っ走って、「夏バンザイ!」と叫びたい。その前に、かき氷機はどこに行ったかな~? かき氷食べたい。私の好みは「レモン」です。私は冷たいものを食べても頭がキーンとならない人間です。なので、ガツガツ食べます。シャカシャカいただきます☆


――閑話休題。


さて、今日で最終日となりました「夏祭り」ですが、この後1週間はこの海の画像で行きたいと思っていますので、少しではありますが、余韻を楽しんでいただければと思います。このような辺境地へおいで下さっている皆様、20000hitありがとうございました。またのキリ番、どうぞ狙って下さいませ!

このお話は、私にしては珍しく、くすぐったくなるような甘いお話です。久しぶりではないかな? 彼をもう少し皮肉屋にする案もあったのですが、それではあまりにも可哀相だと思ったので(誰がとは言わない)、いつもより少し意地悪程度にしておきました。ふふふ。

それでは、キリ番リクエストをお楽しみ下さい♪




                     * Summer holiday *


 風を切って街を真っ直ぐに通り過ぎていく。時々、人が驚いて眼で追うけれど、そんなことも気にならない。だって、こんなに面白いことを、そんなちっぽけなことで止められる訳がないでしょう?
 カタン、と赤い車体が上下に揺れる。足をペダルから放して、あたしは海に向かう。
 前髪も、ブラウスの襟も、スカートの裾も、風に膨らむ。
 視界に捕らえるより先に潮のにおいがしてくれば、海岸はもうすぐだと言われたようなもので、あたしは自転車を漕ぎ始めていた。ハンドルに掛けておいたラジオからは、昔の流行歌が今も新鮮に耳に届く音楽を流している。うん、あたしの好きな曲だわ。
 今日は良いことが起きそう。
 朝から気分がいいと、その日1日がいい日何じゃないかって思う。ああ、今ならどんなことでも笑顔で許してしまいそう……なんて考えてたら、突然、後から声をかけられた。
「マリナ」
 振り返れば、今自転車で通り過ぎてきた道から、普段の服装よりも幾分ラフな格好をした美人が、優しく揺れる青灰色の瞳であたしを見つめていた。それは久しぶりに見る、シャルルの姿だった。
「君が自転車で通り過ぎていくのを見かけたから、追って来たんだ」
 そう言って長い白金の髪を風になびかせながら、じっとあたしの眼を捕らえ、歩み寄ってくる。あたしはといえば、それはもう驚いてしまって、言葉もなく、お気に入りの曲も耳に入って来ないくらいだった。
「どうした、失語症か?」
 ……あたしを勝手に病人にするんじゃないっ。
「お腹でも空いてるのか?」
 ………失礼ね、ちゃんと朝食代わりにクッキーを食べてきたわよ。
「日本語まで理解できなくなったか?」
 …………日本語までって、どういう意味よ!
 ブンブンと首を振り続けていると、シャルルは顎に手を当て、軽く首を傾げながら、皮肉げな口調で続けた。
「ああ、やっぱり運動性失語症な訳だ」
「違うって言ってるでしょっ!」
 海岸に一歩足を踏み入れたあたしはくるっと振り返り、勝手に失語症にしようとしたシャルルを睨み付けた。するとシャルルは、ニヤリと笑ってみせ、あたしを酷く落ち込ませたのだった。ああ、しまった。シャルルの罠にはまってしまったわ。ううっ、あたしのバカ。
 すっかり意気消沈したあたしの後を、シャルルはクスクス笑いながらついてきた。
「……どうしたの、こんな朝早くから」
 彼がこんな朝早い時間から起きて、はっきり意識があるなんて……普段なら絶対にあり得ないわ。
「骨休め」
 思いっきり疑り深い顔をしていたのか、シャルルはチラリとあたしを見ると、さっと視線を避けた。あ、怪しい。
「毎朝、こうやって散歩してるのか?」
 波の音と交じって、シャルルの透明な声をこうして傍で聞いていることがとても不思議なことのように思え、わずかにも彼が微笑んだように見たからか、あたしは急に落ち着かなくなって、視線を遠くに向けたのだった。
「まあね。ほ、ほら、朝の海岸て誰もいないから独り占めしてるみたいで、散歩にはもってこいなのよ」
「へえ」
 朝早い海岸沿いには、人の姿もまばらで、メイド姿のあたしと貴族然としているシャルルのふたり組は、さほど目立つ存在ではないように思えた。それでも、見知った顔が手を振ってくれる。けれど、それを繰り返していると、隣にいるシャルルがどんどん無口になっていくのよ。もう、何だって言うのよ。
 気まずい雰囲気のまま歩いて、あたし達はいつの間にか人気のないところまで来てしまっていた。
「すっかり人気者だな」
「メイド姿の日本人が買い物に出るから、みんな珍しがって話しかけてくるのよ」
「おまけに君は4頭身だしね」
 ガオッ!
 怒ってシャルルを睨み付けると、シャルルは口の端を少し上げて、彼独特の笑みを浮かべていた。その瞳は静かな海を写したように光りが和いでいて、言葉とは裏腹な感情をうかがわせ、あたしは久しぶりに間近に見るシャルルの横顔に、うっとりと見惚れてしまったのだった。
「座ろう」
 あたしの二の腕を掴み、シャルルはいつの間にか砂の上に腰を下ろしていた。下から見上げてくる甘やかな雰囲気を覗かせたシャルルに逆らうことが出来なかったあたしは、引かれるままに、彼の隣にぺしゃんと座り込んでしまったのだった。うっ、意志薄弱に磨きがかかりそう……。
「漫画の方は順調みたいだね」
「うん。もう、ほぼ終わってるのよ」
 と、いうことにしておく。
「それは良かった。けど、その服装を見ると、漫画描いてる時間なんてないように思うけど?」
「そりゃあ、一応、こんな服装はしてるけど、皆みたいにお仕事が出来る訳じゃないから、お手伝いをしてるって方が正しいの」
「違う仕事をして、気晴らしになったか?」
 わずかに硬くなった声色の変化に気付いて、あたしはシャルルを見やった。潮風がシャルルの髪を撫で、白い頬や青灰色の瞳にかすかな影を落としていた。それはどこか悲しげな、切ない1枚の絵のようだった。
「楽しかったわよ、すっごく。……でも、その反面、少し寂しかった。だって、その楽しみを分かち合える人がペピートしかいなかったんだもの。マドレーヌは忙しそうだし」
 自分から離れることを選んでここに来たのに、その時のあたしは、何故か腹立たしい思いで、少しずつ切ない気持ちになっていた。
「ジルに言いたかったわ、あそこにはおいしいケーキ屋さんがあるのよって。そして、あそこのお店には色んなものが置いてあるんだって。それから、朝の海辺を散歩するのがどんなに気持ち良いかも教えてあげたい! ああ、他にもたくさんあるわ。ここで言い切れないくらいあるの」
 それでもペピートにとってはどれも小さい頃から慣れ親しんできたことだから、反応に乏しいのよね。始めの時くらいよ、付き合ってくれたのは。楽しいと思う時は、誰かが隣にいないと駄目なのよ。同じものを見て、同じように感じてくれる誰かが傍にいなきゃ。そうしたら、もっと楽しめるはずだもの。
「オレじゃあ、ジルの代わりは出来ない? 今、ここにいて、君の話が聞ける立場にいるけど」
 ビックリして振り仰ぐと、魅惑的な瞳があたしを誘うように細められていて、うっかりするとそのままシャルルの雰囲気にさらわれてしまいそうだった。でも、よくよく考えてみれば、あたしにそんな時間なんてないのよ。これから買い物をして、掃除を手伝って、朝食をいただいて……とにかく、色々あるんだから。
「残念だけど、シャルル…」
「おっと、忘れてた。これ、君の休暇許可書」
「え? なにそれ」
 ヒラリと手渡された薄い紙にはマドレーヌの字で、「休暇を得ることを許可します。マリナさん、楽しんで下さいね!」と書かれていた。ちゃんとサインしてあるとはいえ、これを許可書として扱ってもいいのか、うーん、悩むところだわね。
 あたしが横で唸っていると、シャルルはそんなあたしを促すように立ち上がり、手を伸ばす。
「ほら、ケーキ屋に行くんだろ。案内してくれ」
 その素敵な誘いに、あたしはすっかり喜んで手を差し出した。
「朝の海辺も素敵でしょ?」
 意地悪くも、あたしは朝が弱いシャルルにそう聞いてみた。すると、シャルルはあたしの手を取りながら、
「夕暮れ時の方がもっと素敵だ」
 と、溜息をつきながら言ったのだった。あたしはおかしくて、ついつい笑ってしまった。やっぱり我慢してるのだと思ったら、さっきから微妙に不機嫌なのも納得できる。
「ごめんね、朝早くから付き合わせてしまって」
「何を今更」
 そうしてあたし達は1日だけ観光して回ることになったのだった。
 日が高くなってきて、まぶしいほどに全ての色という色が輝きだしてきた。海面もキラリと白い。街の中心部では、街の人々で賑やかになっている頃だろうか。活気づいた声が空に木霊している。ああ、今日も街の人は元気だ。
 放してもらう機会を失ったまま手を引かれ、あたし達は来た道を戻る。乗ってきた自転車のところまでようやく辿り着いて立ち止まると、あたしはシャルルに言った。
「着替えてくるから、あの通りにあるカフェで待っててくれる?」
「了解」
 ちょっと離れたところで、あたしはシャルルを振り返った。すると、シャルルはまだそこに立っていて、振り返ったあたしを甘く輝く優しい眼で見ていた。ふっと思い立って、小走りに走りながら取って返すと、シャルルはどうしたと訊ねるように首を横に倒す。白金の髪がサラッと肩から流れ落ちるのと、あたしがシャルルの頬に顔を寄せたのはほぼ同時だった。
「ありがと」
「……そう思っているのなら、早く帰って来い」
 シャルルを見上げる位置に下りてそう告げると、シャルルは呆れたように返した。
 そう、シャルルはきっと、こうなることを全部お見通しだったんだと思う。だから、あたしからの伝言に何の反応も示さず、ただじっと信じて待っていてくれたのだ。そうして、今、ようやく迎えに来てくれた。
「本当はもう仕事も終わっているんだろう?」
「シャルルかジルが来てくれるのを待ってたんじゃないの」
 不満を口にすると、シャルルは手を上げて、あたしの頬をつねった。
「ひとりで帰って来い。手間をかけさせるな」
「いひゃい! んもうっ、か弱い女の子に何すんのよ」
 シャルルの手を振り払って頬をさすりながらも、あたしは、シャルルがあたしの気持ちをわかってくれているのを感じてそう言った。
「わかったから、早く着替えに行ってこい。せいぜい、女の子らしく可愛く着飾ってくるんだな」
 そんな言い合いをしながらあたし達はほんの少しの間別れ、また合う時間へと向かったのだった。ラジオから軽やかな音楽が流れて、風に乗って運ばれる。それを耳にした人が振り返ってあたしを見、ニッコリと笑って挨拶をしてくれる。なだらかな坂を、あたしは心を弾ませ、駆け登る。



 ああ、やっぱり、あたし、ジルに言いたいことがたくさんあるわ!



<end>




          ―― Thank you for 20000hit! by request of Olive ――

             BGM: 「ルージュの伝言」「やさしさに包まれたなら」/荒井由実
                   VONDA SHEPARD



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【 2007/08/25 】 【物語】 | TB(0) | CM(0)
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