空模様

思いついたままをぽつぽつ綴ります。
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夏休み [2]

本日で2日目となりました「夏祭り」、皆さん、楽しんでくれているでしょうか?

次のキリ番はいくつにしようかと悩みながら、このお祭りをしています。
まだまだ暑い日が続いていますが、私はもう秋の気配をゆっくりとそこかしこから感じています。ああ、これが残暑なんだなあ、と思うと、夏が好きな私としましては、ちょっと寂しい。

だがしかし、まだ夏だと暑さが粘っているのなら、私だって粘って、「ようしっ、まだ夏だ! 祭りだ! キリ番リクだっ!!」と盛り上がってみたいと思います。

それでは、「Snmmer vacation」(2)です。
右下の「続きを読む」からお入り下さいませ!!





 やがて左手に海が見えてきて、わずかな潮の香りが風に乗って運ばれてきました。ここまで来ると、私は懐かしさから知らず知らずの内に顔がほころんでしまいます。
 海面が陽の光をキラキラと反射して輝いているのが見え、白い波は砂を洗って再び海へと帰る。車道はそんな海と平行に沿いながら街まで続いています。
 ミラー越しに後部座席を見やると、風に髪を遊ばせながら、マリナさんは好奇心を抑えきれない子供のように身を乗り出していました。ペピートを押し退けて。私は、それを微笑ましい思いで見ていました。
 別荘は、市街地を抜けた小高いところにあります。
 海から吹く風が街を抜けて、街並みを見下ろしていたマリナさんに歓喜の声を上げさせました。横にいたペピートは、悪戯っぽい顔をしながらマリナさんと一緒になって笑っています。すっかり仲良くなってしまっているふたりに、私は少しだけ笑いを滲ませながら、声をかけました。
「マリナさん、ペピート、早く荷物を下ろしましょう。見学はその後ですよ」
 元気よく返事しながら、車からそれぞれの荷物を下ろしては別荘に運び入れ、私達はようやく人心地つきました。別荘の中のひんやりとした空気が気持ちよく、私達はしばらくホールのソファに座って話をしていました。夕方の食事はどうしましょうとか、部屋割りなのことなど、細かいことについて。そうして、マリナさんの仕事はその日から始まりました。
 お仕事していただくに当たって、マリナさんには紺色の制服に着替えてもらいました。髪も動きやすいようにまとめさせていただき、部屋から出てきたマリナさんを見たペピートは、「中学生くらいに見える…」と言って、マリナさんの機嫌を損ねさせましたが、制服というものは、その人の身体に似合うようになるまでには時間がかかるものです。時間が経てば、きっと、マリナさんも制服が似合う素敵な女性になっているはずです。
 曲がったブラウスの襟を直して、マリナさんは怒りに任せて部屋の掃除にかかりました。アルディ家から来たメイドと忙しく体を動かすことは、マリナさんに楽しいことだったのでしょうか、談笑しながらお仕事しているのを見て、私は安心してドアを閉めました。
「ジル様でいらっしゃいますか。ご報告が遅くなりましたが、無事にこちらに着きました。皆様をお貸しいただいてありがとうございます。今、マリナさんは、楽しそうにお掃除なさっています」
『よかった。差し出がましいことをしてしまったと思っていたのですが』
 日本語が話せる使用人がこちらにはひとりもいないのだと相談したのは私です。マリナさんがメイドとして働くことを承諾したまでは良かったのですが、一緒に働いてくれる仲間と言葉が通じないのでは働くのに不便を感じてしまうでしょう。どうしたらよいかとジル様に相談すると、ジル様はアルディ家の使用人を派遣して下さったのです。
「いいえ、私の家から出してもらっていたら、私の方が気を使ってしまいます。ジル様、どうぞお気になさらないで下さい」
『そう言っていただけると助かります。マリナさんは、あれから何も言っていませんか?』
「……はい。すっかり忘れてしまったみたいに元気に振る舞っています」
『そうですか。一応、仕事道具は持っていったみたいなのですが、やはりすぐに描く気にはならないものなのでしょうね』
 マリナさんが漫画を仕事にしているのは知っていました。それが、今度のお仕事はマリナさんにとってはとても難しいものだったらしく、何度も描いてはやり直すという作業がここ数日続いていました。1週間経った頃、徹夜で眼を赤くしてマリナさんが来た折には、何かに取り憑かれたのではないかという噂が屋敷中に広がったものです。マリナさんは、それ程やつれて見えました。心配したジル様はマリナさんを無理矢理屋敷に泊まらせ、その不規則な生活の改善を図りました。数日後に改善したのはいいのですが、ジル様の眼には、マリナさんが空元気を出しているように写ったのです。
『マドレーヌ、申し訳ありませんが、マリナさんの様子をもうしばらく見ていて上げて下さい』
「もちろんです」
 ジル様は、本当にマリナさんがお好きなのだと思うと、私も何としてでもマリナさんに元気になって欲しいと考えずにいられませんでした。
 電話を切ると、軋むような音を立ててペピートがドアを開けてこちらを覗いていました。
「今の電話、ジル様と?」
「そうよ。到着の報告をしていたの」
 ペピートは、「ふーん」と言って、檜の香りのするイスに腰かけました。絨毯の模様を足先でなぞるのを見ながら、落ち着きのない弟は忙しく口を開きました。
「ジル様はこちらには来ないの?」
「残念だけれど、いらっしゃらないわ」
「じゃあ、じゃあ、あの、マリナと仲のいい奴はっ?」
「シャルル様のこと? どうかしら。ジル様は何もおしゃってなかったけれど……」
 今度電話する時に聞いておくわ、と約束すると、ペピートはがくがくと首を縦に振ってヨロヨロと出ていたのですが、弟の心情は姉の私にもわかりませんでした。ひょっとしたら、仲良くなったマリナさんを取られてしまうと思ったのかもしれません。




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【 2007/08/23 】 【物語】 | TB(0) | CM(0)
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