貴方に、ありがとう!!

「空模様」をご覧の皆様、この2週間、途切れ途切れになりながらもUPしたお話を読んで下さってありがとう!!!
キリ番リクエストは、今日で終わりですが、これからも「空模様」をよろしくお願いします

さて、今日はお話の方がとても長いので読む前に疲れてしまわないようにお礼だけにしておきますね。
それでは、ラストです☆


 横を見なくても、マリナにはそこにシャルルの手があることがわかった。それをゆっくりと辿っていけば、白金の髪の間からこちらを見つめてくる熱っぽい瞳の色がある。そんな瞳を前にして、マリナは、シャルルから聞こえる秒針の音が自分の鼓動よりはっきりと聞こえる気がして困ってしまった。
「あたしは、別に、意地悪なんかしてないわよ……。大体、あたしに話せない理由って、何よ。あたし、何もしてないわよ」
 慎重にそう言うと、シャルルは顎を上げて斜めにマリナを見た。その動作に、マリナは途端にムッとする。
「なるほど。君は確かに何もしてないかもしれないね。オレの留守中、うれしそうに館に滞在していたことまでは許してあげる。うちの使用人に迷惑をかけたこともね。だけど、オレがいない間にコソコソとデートすることはないんじゃない?」
 シャルルの顔が、マリナの顔と同じところまで下りてきた。シャルルの香りが、マリナの感覚を支配する。シャルルの腕にも、その腕を掴んでいるマリナの手の上にも、長い髪が流れ落ちる。クラクラと軽いめまいを覚えながら、それでもマリナは、どうにか壁に背中を押し付けつつ立っていられた。
「で、デートって、何のこと……?」
「ああ、こういう噂はなかなか本人達の耳に入らないからわからないのかな?」
 シャルルは意地悪く言って、皮肉げに笑う。
「君とお似合いだという男と一緒に、楽しく歩いていたんだろ。これがデートじゃないなんて言わせない。中学生じゃあるまいし、男と女が一緒に歩いていたら、それはもうデートっていうんだよ、マリナちゃん」
「……シャルル……」
 極論過ぎるとマリナは思ったが、口には出せなかった。
 代わりに出てきた言葉は、自分でも意外な言葉だった。考えるより先に、スルリとそれが口から滑り落ちていたのだ。
「もしかして、妬いてる?」
「…………」
 シャルルの動きが止まった。
 ジルの言葉がマリナの脳裏を横切る。
 ――シャルルは、ペピートとマリナさんの関係をどこからか知って、慌てて帰って来たのではないでしょうか。
 どうして?
 そこへ、沈黙を破るようにノック音が響き渡り、扉が外側から開かれた。
「なあ、マリナ」
 蜂蜜色の髪の中に指先を埋め、めんどくさそうにそう言って入ってきたのは、シャルルが嫉妬の目を向ける人物、ペピート本人だった。
「今日は動物園にでも連れて……」
 彼はすぐ横にいたマリナ達に気付くと、一瞬、凍りついたように立ち止まった。彼の目線の先には、わずかに赤みがさした頬をしながら、目の前にいる男の腕を握るマリナの姿と、そんな彼女の横に手を突きながら顔を寄せる、いつか見たあのミシェルとかいう男の姿。誰がどう見ても、恋人同士のように見えた。
「ペピート…」
 マリナが名前を呟くと、ペピートは上げていた手を下ろし、指先を揃えて軽く謝った後、静かに出て行ってしまった。完全に誤解されたと悟ったマリナは、彼が立ち去った後も扉を穴の開くほど見つめ、呆然としていた。最悪のタイミングだ。
「ひょっとして、あいつがデートの相手?」
「……そう。名前はペピート・ロラン」
 どこかで聞いた姓だと、シャルルは思った。
「マドレーヌの弟よ」
 シャルルの心情を察したかのように、マリナは答えを出す。
 確か、彼女の弟はふたりいたはずだ。下の弟はまだ、義務教育を受けている。
「年齢は15歳」
 シャルルに囲われながら、マリナは挑戦的な目つきでシャルルを見上げて、言った。そうすると、顔と顔との距離が短くなったが、マリナは気にしないことにする。もっと言ってやらないと、気が済みそうにない。
「彼がデートの相手の、ペピート君よ! マドレーヌが風邪をひいたから、代わりに市内を案内してもらってたのっ!!」
 文句があるなら受けて立ってやる、というような眼をして、マリナは口を閉ざした。
 どうやらマリナは、シャルルがマドレーヌに、自分がいない間に館内で騒動を起こさないように観光に連れ出してくれと密かに頼んでいたことを知っていたようである。そしてシャルルは、その相手が男に代わった途端、そのことと結びつけられずに思い違いをしてしまったのだ。いくら自分の知らないところで話が変わってしまったからといって、中学生相手に早とちりをしてしまったことに、シャルルは呆れながらも妙な安堵感を感じた。
「……わかったよ。わかったから、そんな眼で睨むのは止めてくれ。話すから」
 穏やかな日を願うから、誰にも言わずにおこうと思っていたのに。
 でも、伝えようとしている。君だけに。
「その代わり、覚悟しておいた方が良いと思うよ、マリナちゃん」
 憎いほど愛おしい、この想いの丈を。








   <終>







「あら、そこにいるのは、ペピートではないですか?」
 ジルはワインレッドの絨毯の上に爪先を揃え、廊下の先を眺めてよく通る声で呼ばわった。ジルの目線の先にいた少年は、ジルの姿を認めると、静かに駆けてくる。彼の姉から話を耳にしたことが幾度かあったが、彼と会ったのはつい最近のことだ。
「そんなに慌てて、どうしたのですか?」
「慌てていましたか、僕」
「ええ、思わず呼び止めてしまうくらい」
 ジルがクスッと微笑むと、ペピートの顔も緩んだ。ペピートは、こんな綺麗で優しい人が姉ならよかったのに、といつも思う。さすがに、恋人になるには自分は幼いと素直にあきらめた。そんな憧れを抱いている人の友人がマリナであることは、ペピートには未だに納得できない事柄のひとつだ。けれど、一緒にいるふたりを見ると、何故かしっくりする。その理由をわかりかけている――ということに、ペピート本人は気付いていない。
「何かあったのですか?」
 ペピートは、たった今見てきたことを思いだし、言葉に詰まってしまった。
「……マリナの部屋に、男が」
 たったそれだけのことでと自分でも思うのだが、どうしたって驚きで動揺してしまう。あれだけの美人がどうしてマリナに迫っているのだろう。同意を求めるようにジルの顔を見れば、彼女は何か思案している様子で、手を顎にあてていた。
「不躾なことを聞いても良いですか? ……あなたにそっくりな姉妹はいますか?」
 よくよく思い出せば、彼とジルはとてもよく似ている。いや、彼女と言うべきだろうか。彼女は男のように振る舞いたい人間なのかもしれない。「オレ」と言ってみたり、胸を隠すことは、彼女がそうしたいからだ。あるいは胸がないのかも。とにかく、そう考えれば、全てが納得できる。
「残念ですが、私にそっくりな姉妹はいません。けれど、私にそっくりな兄弟がいますよ。ちょっと、マリナさんのところに寄って行きましょうか」
 そう言って、ジルはペピートが来た道を戻り始めた。ペピートはジルの後ろについて歩きながら、自分の馬鹿げた考えに頭を悩ませていた。思い込みが酷いにも、程がある。これだから自分はまだ子供だというのだ。
「だからっ、ジョンの言うことは大袈裟なんだって言ってるでしょ!」
「そいつはジョンじゃなくてジャックだ。ジョンは庭師」
「……どっちだって同じでしょ……」
「ジョンは気難しくて、愛称で呼ばれるのを嫌うんだ。一緒だと思うなら今度試してみたら?」
 ジルが扉を少し上げただけで、中の会話が後ろにいたペピートにも届く。もっと甘い会話を想像していたペピートは、しばらくの間、ふたりが何を言っているのかわからなかった。振り返ったジルが苦笑いをしてしまったほどに、変な顔をしていたみたいだ。
「ビックリしましたか? あのふたりはいつも言い合いをしているといってもいいくらいなんですよ。話は変わりますけれど、今日もマリナさんを誘いに来て下さったのでしょう?」
 頭の中で今起きていることを整理しながらジルの質問に頷き返すと、ジルはゆっくりと微笑んだ。けれど、その笑みは哀愁を帯びてペピートの眼を引く。
「ごめんなさい。ここ数日間、マリナさんはきっと一緒に遊びに行けません。代わりに、この家の当主に挨拶させますね」
 ジルが話している間にも、ペピートが変な顔をし続けている間にも、ふたりは言い争いを続けている。よく聞けばどうでもよいことをふたりは真剣に言い合っているので、ふざけているのではないかと思えるが、どうにもそういう雰囲気ではなさそうだ。いくらジルがノックをしても、中のふたりは全く気付いていない。
「……まあ」
 そっと扉を開けて中を覗いたジルは、驚きの声を上げ、再び扉を閉めた。
「挨拶は次回にさせますね。実は、マリナさんと一緒にいた方が当主なのですが、ふたり共どうやら取り込み中のようですから。お詫びといっては何ですが、今日は私と一緒にお茶でもしませんか?」
 ジルのその申し出に、ペピートはもちろん頷き返してよろこんだ。マリナと一緒にいた男があのミシェルではなく、当主のシャルルだということも、彼等が双子の兄弟なのだということも、ペピートはこの後知ることになる。
「ねえ、いい加減離れてよ」
「駄目だね。まだ言い足りないことが山ほどある」
 ペピートが最初に見たそのままの格好で、シャルルとマリナは言い合う。
「じゃあ、もっと手短に言って」
「手短にね…」
 そう言うと、シャルルは壁から手を放し、すぐ傍にあったマリナの頬を両手で包み込んだ。途端、眉を釣り上げていたマリナの表情が一変し、眼鏡の向こうで瞳が大きく開かれた。顔中が熱くなったことがシャルルにも伝わっていると思うと、マリナはもっと赤くなった。
「オレはいつもいつも、君のことを想っている。どこにいても、何をしていても、君のことを考えている。ああ、君は元気でいるだろうかとか、君がまた事件に巻き込まれてはないだろうかとか、誰かに喧嘩を売ってはいないだろうかとか、誰かに迷惑をかけてはいないだろうかとか」
「……つまり、何が言いたいの?」
 その言葉を待っていたかのように、シャルルは微笑む。
「つまり、悪いことは出来ないっていうことだよ、愛しいマリナちゃん」








     Thank you for 8000hit,10000hit and 1st Anniversary !
               by request of Kumew



                      前のページ <<  >> おまけ

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

メールフォーム

返信不要の場合はひと言添えて下さいませ。  基本的には入力したアドレス(携帯でも可)に返信させていただきます♪

名前:
メール:
件名:
本文:

Calender
09 ≪│2017/10│≫ 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

Counter
キリのいい数字が出たらお知らせください♪
夢を叶えるための名言集


presented by 地球の名言
プロフィール

和ぎ(なぎ)

Author:和ぎ(なぎ)
7月30日生まれ。
北陸在住の藤本ひとみ中毒者。
性格: 小心者、忘れっぽい、
     面倒臭がり屋、マイペース

★ 初めましての方は「紹介」をご覧下さいませ。
気軽にコメント or 拍手をいただけると喜びます。もちろんメールも可。

↓↓ HP    

_

  ブログ(分家) ↑↑

カテゴリー
最近の記事
コメント
トラックバック
リンク
待ってます!